その日の朝、特に出かける予定はありませんでした。
ゆっくりと起き出して朝ごはんを食べながらテレビをつけると、俳優の松重豊さんが折りたたみ自転車で南阿蘇を巡るという旅番組が流れていました。

見覚えのある景色もあれば、初めて目にする場所もあります。
なかでも目を引いたのが、ケーキ屋さんとパン屋さんと喫茶店が三軒並んで建っているというお店の紹介でした。
ケーキを買って、パンを買って、そのまま隣の喫茶店でコーヒーと一緒にケーキをいただける。
なんというぜいたくな並びだろうと見ていました。
番組はさらに高森のほうにも足を伸ばし、赤牛のステーキなども紹介されていました。
気づけば体がうずうずしてきました。
【本日のコース】

「南阿蘇、行こか」
最近はめっきりバイクの後ろに乗らなくなっていた妻を誘うと、珍しく首を縦に振ってくれました。
テレビの力というのはすごいものです。
さっそく準備にとりかかります。
時刻はすでに午前中の遅い時間になっていました。
道路情報を確認すると、都市高速も九州自動車道も混雑しています。
しかし、下道をのんびり走る時間的余裕はありません。
混んでいることを承知の上で、出発しました。

本日のルート
太宰府インターから九州自動車道に乗ります。
確かに混んではいますが、渋滞というほどではなく、ノロノロとした流れにはなりません。
FJRのどっしりとしたクルーズ感で、高速の混雑もさほど苦になりませんでした。益城インターまでそのまま走り抜けました。

グランメッセでイベントですか?
インターを降りると、グランメッセ熊本でなにかイベントが開催されているようで、人と車がにぎわっています。
ちょっと覗いてみようとバイクを止めて中に入ると、珍しい観葉植物の販売や子どもたちの出店などが並ぶイベントでした。
特に目的もなく一回りして、また出発です。
グランメッセからは、いつも使う空港線ではなく、その一本南側を走ることにしました。

地図で見れば農道に近いような細い道で、熊本に住んでいたころですら通ったことがないルートです。
しかし走ってみると、これが気持ちいい道でした。生活感のない静かな田園の中をするすると抜けていく感覚があります。
景色もよく、知らなかったことを少し後悔するような道でした。

西原村に入り、少しずつ標高を上げていきます。
萌の里は通過
途中に「萌の里」という物産販売所がありますが、今回は素通りです。

高遊原台地展望台
通称X橋と呼ばれる橋を渡り、俵山に登る入口も通過して、高湯原大地展望所まで上がってきました。

ここからは熊本市街や雲仙方向まで視界が開けていて、なかなかの眺めです。
しばらく景色を楽しんでから先へ進みました。

しばらく走ると、俵山をくぐる俵山トンネルに入ります。
南阿蘇展望所
2つ目のトンネルを抜けたところに、南阿蘇展望所という展望スポットがあります。
車が数台止まっているだけの静かな場所ですが、ここから阿蘇の山並みが一望できるのです。

荒々しいイメージの強い阿蘇ですが、この角度から見ると、どこか優しい表情をしています。
ここでもしばらく景色を楽しんでから、次の目的地へ向かいました。

めるころ菓子工房・めるころパン工房・めるころ喫茶店が並ぶ
今日最初の目的地は、朝のテレビで見たあのお店です。
めるころ菓子工房・めるころパン工房・めるころ喫茶店。
この三軒が南阿蘇の一角に並んで建っているのです。
南阿蘇村の河陽エリアにある、知る人ぞ知るスポットです。
テレビで見た瞬間から「行きたい」と思っていた場所に、こんなに早く来られるとは思っていませんでした。
まず最初に向かったのはめるころパン工房です。

木々に囲まれていて外からは少し存在感が薄いのですが、店内にはどんどんお客さんが入っていきます。
中に入ると、売り場の棚はすでに半分ほど空になっていました。
それだけ人気のお店なのでしょう。
店員さんの数も売り場の広さからするとちょっと多いくらいで、活気があります。
気になったパンをいくつか手に取ってレジへ向かいました。
パンを確保してから、お隣のめるころ菓子工房へ移動します。

妻が大好きなタルトが並んでいて、バームクーヘンも種類豊富に揃っていました。
ショーケースを眺めながら、イチゴのタルトとロールケーキを選んで購入しました。
そしていよいよ、お隣のめるころ珈琲店へ。
箱に入ったケーキを差し出すと、「飲み物はいかがなさいますか」と案内してくれました。

コーヒーを頼んで席に座り、ゆっくりとケーキと珈琲をいただきます。

ツーリングの途中でこんなひとときが過ごせるとは、なんともぜいたくなことでしょう。
目的の半分はここで達成してしまったような気持ちになりました。
ゆったりとした時間を過ごした後、店を出て南阿蘇をさらに走ります。
あそ望の郷くぎのへ向かう
阿蘇山上に登ってもいいのですが、せっかく南阿蘇に来たのだから、南阿蘇の視点から阿蘇を眺めたいという気持ちがありました。そ
こで向かったのが、「あそ望の里くぎの」です。

いつ来ても人気のある施設ですが、この日もたくさんの人でにぎわっていました。
私はこの施設から見る阿蘇の山容が好きです。
広大なカルデラの底から見上げるのとはまた違う、外輪山越しに望む五岳の姿は、何度見ても飽きることがありません。

しばらく阿蘇山を眺めた後、今度は山上へ登ることにしました。

阿蘇山上へ
南阿蘇から阿蘇山上方面へ向かうルートはいくつかありますが、今回は一の宮方面から阿蘇パノラマラインに入りました。
カーブが続く山岳路ですが、前方に数台の車が連なっていたので、その流れに乗ってゆっくりと上がっていきます。
ヘアピンを2つ抜けたところで、右手に阿蘇パノラマライン展望所があったので立ち寄りました。
今度は逆に南阿蘇方向を見渡すことができます。
登ってきた南阿蘇の田園風景が眼下に広がっていて、これもまた素晴らしい眺めでした。

展望所をあとにして、さらに阿蘇山上へ。
この日は火口へ向かう道路が閉鎖されていました。

最も火口に近い場所には行けませんでしたが、山上の駐車場からでも十分すぎる景色が広がっています。
阿蘇の荒々しい山肌を間近に感じながら、しばらくその景色に向き合いました。
草千里へ
続いて草千里方面へ向かいます。
山上から草千里へ向かう直線路が、これがまた気持ちいいのです。

視界が開けて、阿蘇の空の広さを全身で感じながら走れます。

草千里の駐車場は混雑していましたが、バイクはすんなりとバイク専用の駐輪場に止められました。

お土産屋さんを端から端まで眺めて回りましたが、以前より値段が上がりましたね。
昼食も取れたらと思っていたのですが、今回は見送ることにしました。
草千里ヶ浜の手前から烏帽子岳を眺めると、緑の草原に多くの人が散策しています。
気持ちよさそうな光景でした。

美しい米塚
草千里からは道の駅あそ方面へ下ることにしました。
車が多くスムーズには走れませんが、その分ゆっくりと景色を楽しみながら降りていくことができます。
左手に米塚がよく見えるところでバイクを止めて写真を撮りました。
なんと美しい形をしているのだろうといつも思います。
噴火によってできた完全なコーン型の小山が、緑の草原の中に静かに佇んでいる姿は、何度見ても感動します。

そこからは牛が放牧された草原の中を走り抜けます。
右手遠くには外輪山の稜線が見え、手前には阿蘇の田園地帯が広がっています。

自然の力がつくり出したこのスケールの大きな地形の中を走れることが、ツーリングライダーとして本当にありがたいことだと感じました。
道の駅あそには立ち寄らず、そのまま内牧方面へ向かいます。
内牧でバラ鑑賞と小休憩
内牧へ向かう道もまた直線路が続き、気持ちよく走れます。

右手の遠くには、大観峰の展望台があるであろう外輪山の頂きが見えていました。
内牧には赤牛丼で有名ないまきん食堂があります。
ダメかもしれないと思いながらも、とりあえず2人入れるか聞いてみました。
しかし、受付は16時までとのことで、私たちが到着したのは16時10分。
あと10分早ければという結果でした。
残念ではありましたが、次回のお楽しみに取っておくことにします。
気持ちを切り替えて、大観峰へ向かうルートに戻ります。
その途中でミルクロードに入り、阿蘇ミルクファクトリーに立ち寄りました。
ここにはローズガーデンがあります。
そういえばちょうどバラの季節だなと思いながら入ってみると、これが見事でした。

様々な品種のバラが色とりどりに咲き乱れていて、思わず足が止まります。
赤、白、ピンク、オレンジ、黄色と、それぞれが個性を放っています。
なかには目で楽しむだけでなく、近づくとしっかりとバラの香りが漂ってくる花もあって、五感で楽しませてもらいました。
動画と写真をたくさん撮って、この美しさをみなさんにも届けたいと思いながらローズガーデンを後にしました。

ミルクファクトリーでは妻がヨーグルト、私は牛乳を購入してその場でいただきました。
お土産も豊富に揃っていましたが、今回は飲み物だけで帰ることにしました。

お気に入りルート
さて、ここからが私のお気に入り区間です。

阿蘇ミルクファクトリーから大観峰へ向かうには、ミルクロード(国道212号)をぐんぐんと上がっていかなければなりません。
この上り区間が、私はとても好きです。

適度なカーブの角度、整備された路面状況、そして走るにつれてどんどん上がっていく標高。
FJR1300Aのトルクを感じながらコーナーをひとつひとつクリアしていく感覚は、ライダーとして純粋に楽しいと思える瞬間です。

この区間はツーリングライダーにぜひ走ってほしいと思います。

右折して、大観峰へ。

一番奥の駐車場に向かおうとしたところ、すでに扉が閉まっていました。

営業時間は17時までだったようです。
それでも大観峰からの眺めは変わりません。

外輪山の高いところから見下ろす阿蘇の寝観音は、いつ見ても迫力があります。
阿蘇五岳が横たわる姿を寝観音に見立てたこの景色は、阿蘇を訪れたならぜひ一度は見ていただきたい、九州を代表する絶景のひとつです。
夕刻の光の中で、その景色はいつもより少し柔らかく見えました。

大観峰をあとにして、日田方面へ向かいます。
走り出してすぐに前の車に追いついてしまい、そこから先も車の列に並ぶ形になりました。
バイクにとっては少し退屈な時間ですが、眠くならないよう意識しながら進みます。
やまなみハイウェイから日田へ抜けるルートをたどり、しばらくすると日田市内に入ってきました。
昼夜兼用の食事は想夫恋
昼食を食べ損ねていた私たちが最後に目指したのは、日田の名物焼きそば「想夫恋」の総本店です。

日田焼きそばといえば想夫恋、といわれるほどの有名店で、パリッと焼き上げた麺の食感が独特の一品です。
実は数日前にも訪問していたのですが、また食べたくなってしまいました。
前回は1時間ほど待ったのですが、今回はすんなりと入ることができて、念願の焼きそばをいただくことができました。

想夫恋でおなかを満たしてから、日田インターから高速に乗って帰路につきます。
高速に乗るころにはすっかり暗くなっていて、ゆっくりとした速度で慎重に走って帰ってきました。
まとめ
朝のテレビが旅の始まりでした。
南阿蘇のケーキ、パン、珈琲。めるころの三軒が並ぶあの光景。
草千里から見た烏帽子岳。
完璧なコーン型をした米塚。
ミルクファクトリーのローズガーデン。
大観峰から眺めた夕刻の阿蘇。
そして〆の想夫恋。
盛りだくさんの一日でしたが、こんなツーリングができるのは九州に住んでいるからこそだと改めて思います
阿蘇はやっぱり、何度来ても飽きることがありません。
また来ます。今日もありがとうございました。
ツーリング情報
使用バイク:FJR1300A(2013年式)
走行距離:走行距離:328km
燃費:燃費:20.87km/L
所要時間:出発時間:09:00頃、帰着時間:20:30頃(所要時間:11時間半程度)
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