バイク用ヘルメット、なんで高くなった?!

「また値上がりしてる…」

バイクショップでヘルメットの価格タグを見て、そう感じた方も多いのではないでしょうか。

バイクライフを楽しむ私たちにとって、安全装備への投資は惜しまないつもりでいても、ここ数年の価格上昇には正直驚かされます。

実は2024年から2025年にかけて、主要ヘルメットメーカー各社が相次いで価格改定を発表しています。

一体なぜ、ヘルメットはこれほどまでに高くなってしまったのでしょうか。

今回は、バイク用ヘルメットの価格高騰の背景を徹底解説します。

目次

相次ぐ価格改定:主要メーカーの動向

アライヘルメット:2024年10月、2025年9月の2回に分けての値上げ

アライヘルメットは、2024年10月に続き、2025年9月1日にも価格改定を実施しました。

この2度目の値上げでは、最大で5,000円の引き上げとなる製品もあり、ヘルメット製品全品(一部除く)が対象となっています。(同じ商品が2度値上げされたわけではない)

アライヘルメット公式によると、価格改定した理由として以下の点が挙げられています。

  • ヘルメットに使用する原材料の価格高騰
  • 光熱費の上昇
  • 人件費の増加
  • 生産にかかわる諸経費の年々の高騰

アライは「社内での効率化やコスト削減により価格維持に努めてきたものの、現行の価格体系では安定した製品供給と品質の維持が困難な状況」とコメントしています。

SHOEIも2025年1月に価格改定

世界トップシェアを誇るSHOEIも、2025年1月8日から順次価格改定を実施しました。

ヘルメットで1,000円~3,000円、シールドなどのパーツ類も含めた値上げとなっています。

SHOEIも価格改定の理由として、「製造に必要な原材料調達価格上昇などの影響」を挙げており、現行の価格体系を維持、継続することが非常に困難になったとしています。

OGK Kabutoなど他メーカーも同様の動き

国内3大メーカーの一角を占めるOGK Kabutoも、原材料費の高騰や製造コストの上昇に直面しています。

海外生産を行っているメーカーでさえ、円安の影響を受けて価格を維持できない状況です。

なぜヘルメットは高くなったのか? 5つの理由

1. 円安による原材料価格の高騰

最も大きな要因は円安の進行です。

2024年には一時1ドル=150円を超える円安が進行し、輸入原材料のコストが大幅に上昇しました。

ヘルメットの主要素材である、下記の商品が値上がりしている影響があります。

  • FRP(繊維強化プラスチック)
  • カーボンファイバー
  • 高性能樹脂

これらの多くは海外から輸入される原材料を使用しているため、円安の影響を直接受けます。

2. 原材料そのものの値上がり

円安だけでなく、原材料そのものの価格も上昇しています。

  • 石油由来の樹脂材料:原油価格の変動により高騰
  • カーボン繊維:世界的な需要増加で価格上昇
  • FRP素材:製造コストの増加

特にFRPは、耐候性、耐熱性、耐久性に優れた素材として高品質ヘルメットには不可欠ですが、その製造には高度な技術と多くの工程が必要で、コストが上昇しやすい素材です。

3. エネルギーコストと光熱費の上昇

ヘルメット製造には高温での成形や塗装など、多くのエネルギーを消費する工程があります。

  • 電気代の高騰
  • ガス代の上昇
  • 工場稼働コストの増加

これらのエネルギーコストは、2022年以降特に顕著に上昇しており、製造原価を押し上げています。

4. 人件費の増加

日本国内で製造しているアライやSHOEIにとって、人件費の上昇も大きな要因です。

  • 最低賃金の引き上げ
  • 人材確保のための賃金上昇
  • 熟練工の高齢化と技術継承コスト

高品質なヘルメットを製造するには熟練した職人の技術が不可欠であり、その人材への投資は製品価格に反映せざるを得ません。

5. 安全基準の厳格化と技術革新

最近ではECE 22.06など、国際的な安全基準がより厳格化されています。

新基準に対応するためには下記の要件をクリアする必要があります。

  • より高性能な素材の採用
  • 厳しい衝撃試験のクリア
  • 新技術の開発と投資

これらのコストも価格に反映されています。

※ECE 22.06:欧州経済委員会(ECE)が定めた新しいオートバイ用ヘルメットの安全規格です。

実際どれくらい上がったのか?価格推移を検証

2017年から2024年の価格推移

バイク用品店大手ナップスでのアライとSHOEIのヘルメット平均販売単価の推移は下記のような状況です。

  • 2020年:約46,000円
  • 2021年:約48,000円(2020年比4%増)
  • 2022年時点:17年比で11%値上がり

さらに2024年から2025年にかけての値上げを加えると、過去5年間で15~20%程度の価格上昇が起きていると推測されます。

具体的な製品での比較

例えば、アライの人気モデルの場合の比較。

  • 2020年頃:約50,000円~55,000円
  • 2025年現在:約57,000円~62,000円

約5,000円~7,000円の値上がりとなっています。

高くなっても品質は向上している

ただし、ヘルメットが高くなった一方で、品質や安全性能は確実に向上しています。

最新技術の投入

最新技術が投入されている事も事実のようです。

  • 軽量化技術の進化:同じ強度でより軽いヘルメットに
  • 通気性の改善:夏場でも快適に使用できる
  • 視界の拡大:より安全な視野を確保
  • 衝撃吸収性能の向上:MIPSなどの最新技術

耐久性の向上

FRP素材を使用した高品質ヘルメットは、使用後5年という長い交換基準があります(熱可塑性樹脂の場合は3年)。

実際に5年で買換えされている方はあまり多くはないと思いますが、耐久性が向上しているとすると、長期的に見れば、コストパフォーマンスは必ずしも悪くありません。

私たちライダーができること:賢いヘルメット選び

1. 計画的な購入タイミング

価格改定の情報は各メーカーが事前に発表します。

欲しいモデルがある場合は、改定前に購入することで数千円の節約になります。

ただ、いつ価格改定されるのか事前にはわからないので、欲しい時が買い時かもしれません。

2. 品質と価格のバランスを見極める

すべてのライダーが最高級モデルを必要とするわけではありません。

自分の使用頻度や用途に合わせて選びましょう。

  • 週末ツーリング中心:3~5万円クラスでも十分な性能
  • 日常的に通勤使用:耐久性重視で4~6万円クラス
  • サーキット走行あり:最高峰モデルで6万円以上

3. セール時期を狙う

バイク用品店では概ね下記のようなタイミングでセールを実施しています。

  • 春のシーズンイン前(2~3月)
  • 秋の在庫入れ替え時期(9~10月)

この時期を狙って買うことができれば、型落ちモデルなら2~3割引で購入できることもあります。

4. 安全性は妥協しない

価格が気になっても、安全性能だけは妥協してはいけません。

必ず確認すべきポイントは下記の3点です。

  • JIS規格またはPSCマークの有無
  • SNELL規格ECE規格などの国際基準
  • メーカーの信頼性(アライ、SHOEI、OGK Kabutoなど)

今後の見通し:ヘルメット価格はどうなる?

短期的には上昇傾向が継続

残念ながら、短期的には下記の理由から価格上昇傾向は続くと予想されます。

  • 円安基調の継続
  • エネルギーコストの高止まり
  • 人件費の上昇トレンド

長期的には安定化の可能性も

一方で、長期的には下記の理由から価格が安定する可能性も考えられます。

  • 製造技術の革新によるコスト削減
  • 新素材の開発
  • 生産体制の効率化

主要ヘルメットメーカーの商品

アライ(Arai)

基本思想は滑らかで強い丸みのあるシェルで「グランシングオフ」を重視し、手作業製造とVAS機構などで安全性を突き詰めています。​

フラッグシップ/レーシング

RX-7 EVO(地域名表記でRX-7V EVO等):最高峰の空力・冷却・安定性、サーキット志向。

Corsair-X:グランシングオフに最適化したPB-SNC2シェル、強力な換気とフィット調整。​

このヘルメットは、価格帯が全然違います。なんで?

スポーツツーリング

Quantic:長距離でも静粛・快適性を意識したプレミアムスポーツツアラー。

ASTRO-GX:ツーリングでの快適性と安全性を両立した、被りやすさを追求したオールラウンダーモデル。

アドベンチャー/デュアル

Tour-X 5:ピーク/バイザー/ゴーグル対応の高い汎用性でオン・オフ両用。

ネオクラシック

RAPIDE-NEO:最新の安全技術とクラシックなネオ・クラシックデザインを融合させたモデル。

Concept-XE:レトロ外観+最新安全技術の融合。

オープンフェイス

VZ-RAM:高い安全性を備えつつ、広い視界と高い開放感を持つ新世代オープンフェイス。

SHOEI

先進複合素材AIMシェル、風洞由来の空力、低騒音化、内蔵サンバイザーや通信機統合などモデルごとに用途最適化されています。

レーシング

X-Fourteen(X-14)は2022年8月31日受注終了
X-Fifteen(X-15)は2025年9月30日受注終了

現在は、X-Fifteen Carbonが2025年10月31日よりSHOEI Gallery各店(SHOEI Gallery Online Storeを除く)にて限定販売されています。


剛性・弾性を高めたカーボンシェルに、時速350km/hを超える超高速走行でも安定する完全新設計のエアロフォルムを採用などプロ向け設計。​

スポーツツーリング

GT-Air 3:AIMシェル、QSV2サンバイザー、静粛性と通信システム親和性を両立。

Z-8:快適なスポーツライディングを意識したピュアスポーツフルフェイス。

ジェットタイプ

J-FORCE IV:高い空力性能とベンチレーション性能を誇る、スポーティなプレミアムジェット。

J-Cruise3:インナーサンバイザーを装備し、快適性と利便性を追求したツーリングジェット。

システム/モジュラー

NEOTEC 3:ツアラー向けの利便性と快適性を強化。

OGKカブト(Kabuto)

国産らしい軽量・空力最適化と「ウェイクスタビライザー」などの独自空力制御で実走安定と静粛性を追求しています。​

フルフェイス(軽量・ツーリング中核)

F-17 Mips / F-17:最高峰の空力技術とMips(一部モデル)を搭載した、本格レーシングモデル。

RT-33X:国内MFJ取得で、軽量ハイスペックなレーシング対応モデル。

AEROBLADE-6:快適性をアップデートした、軽量コンパクトなフルフェイスモデル。​

SHUMA:磨き上げられた空冷性能が特徴の高い快適性を実現したモデル。

オープンフェイス(街乗り、ツーリング)

EXCEED-2 シリーズ:空力を追求し、風の巻き込みを軽減するシールドを採用したモデル。

AVAND2:街乗りからスポーツライディングまでカバーするスポーティなモデル。

まとめ:品質への投資と考えよう

バイク用ヘルメットの価格高騰は、私たちライダーにとって決して嬉しいニュースではありません。

しかし、その背景には円安や原材料高騰といった避けがたい経済状況があり、同時に安全性能の向上という恩恵も受けています。

中高年の私たち世代は、若い頃のような無茶はできません。

だからこそ、質の高い安全装備への投資は、長く安全にバイクライフを楽しむための必要経費と考えるべきでしょう。

価格は上がりましたが、それでも**「一人でも多くのライダーの頭を護る」**という日本メーカーの姿勢は変わっていません。

賢く情報を集め、自分に合ったヘルメットを選び、安全で楽しいバイクライフを続けていきましょう。

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この記事を書いた人

18歳で中型自動二輪を取得し、4台のバイクを乗ってきました。
バイクは「ツーリング」を最も楽しんでいます。

地図を見て、その地に向かう。
バイクで少しばかりの冒険を楽しんでいます。

私が行ったツーリングコースが、皆様の次の冒険先になるようにとこのブログをはじめました。

バイクで冒険に出かけましょう。

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